コラム

摂食障害治療の最大の敵②

2014年02月15日

前回のコラムでは、摂食障害治療の最大の敵は『体重計』であるという話をしました。
その際に私は「家では体重をはからないように」ではなく、「家から体重計をなくして下さい」と言いました。
実は、ここにも病気の自己の行動への読みと防衛があります。

「家では体重をはからないように」
この指示にみんな「はい」と答えますが、この指示だけであれば90%以上の人が実践できません。
それは家に体重計がある限り必ず「体重をはからなくて大丈夫か?」「いつの間にか大分太っているかもしれないぞ」という病気の自己のささやきがあり、このささやきに負けてしまうからです。
治療を進めるにあたっては、この病気の自己による影響の強さを知らなくてはなりません。

実は本人たちは知っています。
ただそれを自分から話してしまうと病気の自己の行動がとれなくなるので、言いたくないだけなのです。
ですから、私はこんなふうに話します。
「体重計は家族に隠してもらうか、捨てて下さい。
体重をはからないと言っても家にあれば不安になって、ついはかってしまうでしょう?」
そう話すと、ほとんどの人はうなずきます。
人によっては「ばれてしまっている」と思い、人によっては「先生はわかっている」と思います。

一般の人にとっては、家から体重計をなくしたってどうってことはありません。
しかし、摂食障害の人にとって、この「体重計をなくす」という課題はとても大きなハードルであり、脅威です。
病気の自己のささやきとの戦いであり、強大な不安との戦いです。
治療者はそのことをよく理解しておかなくてはなりません。
彼らの治療への努力がいかに大変なものかを知っておかなくてはその心に寄り添うことはできません。

「家から体重計をなくす」
この課題こそが摂食障害治療の最初の課題です。
このハードルを乗り越えることができたとき、治療への第一歩が始まったと言えると思います。


本当の自分に目覚め、幸せに生きるダイヤモンドの心の医療