摂食障害治療における目標体重とは?①
2014年03月08日病院で摂食障害治療を受けるとしばしば「目標体重は何㎏です」と提示され、体重を増やすことを治療目標とされます。
目標体重って何?…その根拠がよくわかりません。
治療目標は体重を増やすこと?…部分的には合っているとも言えますが、体重を増やせば摂食障害は治るのでしょうか?
多くの摂食障害治療を見ていると、目標体重は標準体重の80~90%に設定されています。
それ以外にも、そこまでの体重を目指すのは難しいと考えて、それ以下の適当な数値を目標体重にすることもあります。
しかし、その数字に何の根拠があるのでしょうか?
ある程度の健康に近い体重とは言えると思います。
ただ、例えば「45㎏という数字をなぜ目指すのか?」となると、その45㎏という数字には絶対的な意味はありません。
治療で目指すべき目標体重があるとすれば、それは
「その人固有の適正体重」
です。
そして、その適正体重というのはそこに達するまでは正確な数字はわかりません。
では、適正体重とは何でしょうか?
それは間食などをせず朝・昼・夕と3食の食事をきちんととっているときに自然と固定する体重のことです。
この体重になると、低体重のときには止まっていた月経が周期的に自然と訪れるようになります。
適正体重はその人固有のもので、一般に標準体重の80%~100%の間にあります。
稀に、標準体重の70%台の人であっても月経が止まることなく、体重が安定している人もいますが、ごく稀です。
人は本来、少々食事が多くても少なくても体重は適正体重の1㎏前後の範囲内で固定するものなのです。
もちろん、人の3倍以上の食事をとるくらいになると、さすがに多過ぎて肥満になる可能性が出てきます。
あるいは、甘いもの(お菓子類や菓子パンなど)や人工的なもの(菓子類、インスタント食品、炭酸系のジュース、ファーストフード)、多量の飲酒などをすると肥満をもたらします。
しかし、もしこうしたものの摂取を控えて3食の食事の摂取だけであれば体重は適正体重でとどまり、どんなに多くなっても標準体重を超えることはありません。
目指すべき目標体重である適正体重は標準体重の80%~100%のどこかにあるという漠然としたものとなりますが、そこには具体的な数値化をしない方が望ましいという面もあります。
それは数値化そのものが病気の自己を刺激し、その支配から抜けにくくさせるからです。
ただ病気の自己に支配されている摂食障害の人にとっては、しばしば目指すべき数字を明確にしてほしいことがあります。
その場合、一時的な方便として目標体重を設定することが必要なことがあります。
しかし、仮に標準体重の90~100%あたりの体重を提示するとなると、病気の自己に支配されている摂食障害の人はほとんど受容できません。
そこでまずは
「適正体重が存在する可能性が出てくる最低ラインとしての標準体重の80%を目指す」
こととします。
実際、この目標が達成されると体重の回復によって病気の自己もいくらかは縮小し、本当の自己の力が芽生え始めています。
そこで本当の自己の力に訴えかけて改めて目標体重を設定し直し、
「月経が回復する適正体重を目指す」
こととします。
病気の自己の心の強さを考慮し、治療を軌道に乗せるにはこうした段階を踏んだアプローチが望ましいように思います。