拒食症治療を始める前の約束②~「あきらめない」~
2014年01月31日治療を始めるにあたって2つ目の約束は「絶対にあきらめないでね」ということです。
病気の自己に支配された重症の拒食症の人が病院に辿り着くのは大変なことです。
何とか家族に連れられて病院には辿り着いたものの、全く心を開こうとせず、言葉が心に入らない。
そうした人を拒食症治療のスタート地点にまで導くのは至難の業です。
そして、何とか治療をスタートしたものの治療を最後までやり通す。
これがまた極めて難しいことなのです。
いざ治療を開始しても、先生が全然わかってくれない。
そのために治療を脱落してしまうのは仕方のないことかもしれません。
そうではなく、
「先生の言うことはわかる。しかし、自分にはできない」
そのように思って挫折していく人が数多くいるのです。
客観的に見れば、摂食障害の世界にとどまり続けることほど恐ろしいことはありません。
しかし、一旦その中に入り込むと
「この世界から抜け出すと、あなたには何もなくなるよ」
という病気の自己のささやきに翻弄され、抜け出すことに不安・恐怖感を抱くようになるのです。
そして、その世界からの脱出のためにさしのべる治療者の手を離し、再び摂食障害の世界の中に身を置くようになるのです。
だから、本人の心の奥にある本当の自己に向かって約束するのです。
何度も何度も確認するんです。
「絶対にあきらめいでね」
「絶対に手を離さないでね」
絶対に手を離さないでしがみつくと思ってくれている人との治療はいずれも、最後には実を結んできたような気がします。
そのあきらめない、手を離さないという思いこそが芥川龍之介の語る『蜘蛛の糸』となり、地獄の摂食障害の世界から天にある幸せな世界に導くのだと思います。