コラム

いかにして拒食症の治療をスタートするか?⑤

2014年01月24日

拒食症の治療をスタートするにあたって大事なことは、病気の自己が巻き込もうとするわなにひきこまれず、本当の自己の目覚めに向けて病気を治す治療関係に導くことです。
そのために治療者がやらなければならないことは
『その病気の自己が仕掛けてくるわなを見抜く』
ことです。

仏教におけるお釈迦様の菩提樹下の悟り、キリスト教におけるエクソシスト…。
こうした話の中にありましたが、悪魔というものはその存在を見抜かれると人間を支配できなくなってしまうようです。
悪魔という存在を見抜いて「お前なんかに負けないぞ」という信念を持つと、悪魔は去っていきます。

病気の自己もそうしたものと同じようなものです。
その行動パターンを見抜くと、自らを欺(あざむ)き、治療者を欺くような行動ができなくなります。
よって、
『病気の自己が仕掛けてくる一つひとつのわなを見抜き、防衛線を張る』
ことをしなくてはなりません。

何度も言いますが、拒食症の治療をスタートするための準備をせずに食事をどれだけ食べるといった治療の話から始めても、治療の途中で必ずこの病気の自己のわなにつかまってしまいます。
そして、治療が行き詰まったり、一見順調に見えてもふとしたことから症状が再燃したりするのです。
ですから、この防衛線を張るということは遠回りのように見えて、治療を軌道に乗せるために非常に重要なことなのです。

拒食症の人に対して防衛線を張るための提案を始めると、みんな「えっ?」という対応をされます。
それはきっと「『食べなさい』とかそうした話をされるだろうな」と思って診察に来られているので、話の内容が意外なのです。
また、その防衛線を張るための提案が本人たちにとって「本当にその通りだ」「ばれてしまっているな」という内容だからです。
この「えっ?」という軽い衝撃、「ばれている」という感覚を持つと、一時的に病気の自己によるマインドコントロールから離れることができます。
それによって、まずは『治る治療の流れに入ることができた』と考えることができます。


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