コラム

【摂食障害】摂食障害への挑戦

2013年11月11日

摂食障害への挑戦

拒食症との子の関わりで挫折を経た後も、思春期外来を担当するという私の役割は変わらず、彼女らとの関わりは続きました。
そのうち、何人かは入院治療などを経てよくなりましたが、大部分の人は治療の見通しの見えないままに、病院を異動することになりました。

摂食障害の治療に携わる場合、医師が異動するというのは良くないですね。
1年以内に良くなる人もいますが、大部分の人は治療に数年を要します。
治療が上手くいってないときには、主治医が変わることで人生が救われることもありますが、着実に治療が進んでいるときに主治医が変わると一気に崩れてしまうことがあります。
他の病気と異なり、主治医によって治療方針が異なっていることがよくあります。
また、主治医の人間性や、主治医との治療関係が大きく影響しますからね。
できれば、医師は先の見通しを持って、主治医を引き受けることが望ましいのではないかと思います。

さて、私の場合はその後、病院の異動が続き、平成11年に滋賀県立精神医療センターに赴任しました。
そこはスタッフ、環境ともに申し分のない他に類を見ないようなすばらしい病院でしたが、実態は、滋賀県下のどの病院においても治療が困難な患者様を一手に引き受けて治療を行うという最終病院であり、そこで私は再び、思春期外来を担当することになりました。

私自身は、医者になって8年目を迎え、医者として働くには全てが整った最高の環境の病院に赴任することができました。
ですから、他の医者が診ることを避けたいと思うような何か難しい病気にトライし、自らの専門として積極的に診ていかないといけないなという使命感を抱くようになりました。

そんな中で、私が選んだのが摂食障害でした。
「なぜ、摂食障害を選んだのか?」と問われると、明確な理由は述べられません。
もしかすると、それまでに出会ってきた摂食障害の人たちの心に、どこかで親和性を感じていたからかもしれません。
いずれにせよ、もう一度とことんやってみようと決意しました。

まず、当時、出版されていた摂食障害の本をほとんど全て読み尽しました。
そして、赴任して2年目に17才の画家志望の拒食症の子と出会ったのです。
この子との出会い、そして治療は私の大きな転機となりました。
この子との治療は、毎日1~2時間、週に5日は診察をするといったもので、とにかくわからないなら、とことん話そうと徹底的に付き合いました。
そして、考え抜いた末に、全く新たな治療法に挑戦したのです。
それは見事に回復するという結果を得ることになりました。
この子自身は今も再発することなく、画家として個展を開くなどして活躍しています。

以後、県内にとどまらず、他府県においても治療困難とされる摂食障害の子たちが私のもとに訪れるようになりました。
そうした子たちとの治療を通して、ともに人生を歩む中で、私自身も摂食障害の本当の病理が垣間見えるようになり、さらに進んだ治療法を構築していくことになりました。

こうして摂食障害への挑戦が始まったのです。

 


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