【思春期】薬で心の余裕を作る方法
2013年11月11日薬で心の余裕を作る方法
心療内科や精神科の治療において、薬の使い方ほど人によって思い込みの異なるものはありません。
ある人は、治療には薬が必要だと考えます。
ある人は、薬というものは体に害を与えるものだと考えます。
さらに、安定剤のようなものは一旦、飲み始めると依存して手放せなくなるかもしれない。
大体、医者というものは患者を薬漬けにしてもうけているんだ。
だから、絶対に薬を使わない治療をしてほしい。
そんなふうに考えます。
人というものは何でも極端に考えがちなんですね。
正しいか間違っているか、白か黒か、極端に考える方が簡単だからかもしれませんね。
でも、真実というものは何でもバランスの中にあります。
仏教で言えば中道、儒教で言えば中庸と言いますが、右でもなく、左でもなく、そのバランスの中に正しい考え方はあるように思います。
実際、診療の場でいろいろな方と関わっていると、何でも薬を使うという考えも、絶対に薬を使わないという考えもいずれも違うのではないかなという気がします。
大事なのは薬を使うか使わないとかではなく、
「その方に良くなっていただき、幸せな人生を取り戻していただく」
ことだと思うんですね。
私自身の基本的な考え方は、薬はないに越したことはありません。
ただ統合失調症の幻覚や妄想など、どう考えても薬以上に有効な治療手段のない症状もあります。
また、思春期医療でよく使うパターンでは、補助的にお薬を使うという考え方もあります。
本人の気持ちがいっぱいいっぱいのときには何を言っても伝わらないので、心の余裕を取り戻すのが大切です。
その余裕を取り戻し、言葉が伝わる状態にするためにお薬を飲んでいただくという方法があります。
不安が強ければ不安を和らげるお薬、同じことばかりグルグルと考えてしまうならリラックスできるお薬、あまりにイライラがひどければイライラを和らげるお薬など、こうしたお薬を飲むと一定の気持ちの余裕を取り戻せることがあります。
その効果はときに非常に大きいものがあります。
もし、お薬を飲まないで頑張ろうとすると、苦しむ時間や治療期間が非常に長引いたり、治療を軌道に乗せることが非常に難しくなったりすることもあります。
気持ちの余裕を取り戻すと、言葉が伝わりますし、自分を変えていこうとする力も出てきやすくなりますから、お薬によって治療がグンと進みます。
では、薬はずっと飲み続けないといけないのでしょうか?
それは大丈夫です。
心の状態がよくなって安定してくれば、自然と薬は必要なくなり、いずれはすべて手放せるようになります。
大事なのは、その方に良くなっていただき、幸せな人生を取り戻していただくこと。
そのために最善の方法は何かを考え、薬を使うか否かを判断するのが望ましいのではないかと思います。
ときに、心の余裕を取り戻すために、補助的に薬を使うという手段もあるというようなことも知っていただければ、より良い治療を望めるのではないかと思います。