コラム

【医療者の心を守る】医療者の心を守る③

2013年11月11日

医療者の心を守る③

医療者にもいろいろな心の苦しみがあります。
その中でも最も心を脅かすストレスとなるのは、攻撃的な姿勢で接してこられる患者様や家族との関わりだと思います。
そうした人は、他責的な言動に終始し、論理的な説明をなかなか受け付けてくれません。

例えば、あらゆる言葉や態度に対して、被害的にとらえる人がいます。
患者様に対して、好意的な思いを持って微笑み、接していると突然に、
「先生は今、私の顔を見て笑いましたよね。
どうしてばかにしたような態度で診察されるのですか!」
と言われます。
それに対して思わず「いいえ、笑ってばかになんてしていませんよ」と言うと、
「笑っていないですって。
いいえ、絶対に私の顔を見てばかにして笑いました。
それがこうした医者のとる態度ですか!」
何を言っても、聞く耳を持ってもらえません。

杓子定規にとらえる人もいます。
「病気の問題だけではなく、パーソナリティの問題もあるのではないかと思います」と話すと、
「パーソナリティに問題があるですって。
パーソナリティって性格のことですよね。
つまり、私の性格に問題があるということですか。
それって人権を無視していませんか。
先生の態度は人権を侵害していますよ。
もし先生がそうした態度をとられるなら、しかるべきところに訴えますけど、いいですか」

言葉尻をとらえて、揚げ足をとる人もいます。
例えば、
「おそらくうつ病だと思います。
初診なのでまだすべてはわかりませんが、8割くらいの可能性で良くなると思いますよ」
と言った場合、その言葉の最後の部分だけをとらえ、しかもまだ十分な治療期間を経ていないにもかかわらず、
「先生は最初、うつ病は治るとおっしゃいましたよね。
治るっておっしゃったのに1ヶ月経っても全然、変わらないじゃないですか。
ということは、先生は患者に対して、嘘をついたということですか」
といった感じで言われます。

周囲に配慮することなどなく、ただただ自分だけの立場からだけ見て、一方的に権利を主張し、高い要求をしてくる人もいます。
「先生は患者さんが多くいるから、話の時間をとることができないと言いましたよね。
悩んでいる人の話を聞くのが医者の仕事じゃないですか。
相手が悩んでいるなら、1時間でも2時間でも話を聞くべきでしょ。
もし私が自殺をしたら、先生は責任をとれるんですか。
それを話の時間をとらず、お金までとるなんて詐欺じゃないですか」
一旦、こうした人とこのような会話の流れになってしまうと、ついその人の要求する無理なペースに合わせてしまい、何時間もの対応を余儀なくされることもあります。

こうしたやりとりをしていると、医療者によってはこんな気持ちになります。
自分は常識的な対応を行い、それほどの非はないだろうと思っていても、
「もし訴えられて、大変なことになったらどうしよう?」
「噂になれば、職場の同僚は表面的には同情してくれても、本当は自分にも問題があると見られるのではないか」
などといった思いにとらわれ、言いようのない不安や恐怖感に脅かされる毎日を送るようになります。
それによって、非常な精神エネルギーを消耗し、耐え難い疲労をきたすようになります。

このような対応困難なケースへの対応はどうすればいいのか?
これまで医療者や医療関係者だけに話してきた対応法を次回のコラムで話したいと思います。

 


本当の自分に目覚め、幸せに生きるダイヤモンドの心の医療