コラム

【うつ病】イライラとうつ

2013年11月11日

イライラとうつ

「うつ」だという方と話している中で、「イライラする」という言葉を聞くことがあります。
そんなとき、私はふと「?」と思います。

一言で「イライラする」と言っても、いろいろなイライラがあります。
不安や焦燥感が強く、落ち着かないといった意味のイライラ。
やたらとむしゃくしゃする、人に対して腹が立つという意味でのイライラ。

前者のイライラは、うつ病によく見られるイライラです。
エネルギーがなくなって疲れ、心の余裕がなくなったために起こるイライラです。

しかし、後者のイライラはちょっと質が違います。
人に対して攻撃的な思いを持つことができるほどエネルギーがあるというイライラです。
エネルギーはなくなっているのではなく、むしろ、エネルギーはありあまっています。
そのエネルギーをうまく発散できずにマイナス方向に向けてしまっているのです。

このような人も「よく気分が落ち込むんです」と言われます。
確かに、広い意味でそれはうつかもしれません。
一時的なうつ状態ですね。
ただうつ病かというと、それについては「?」がつきます。

なぜなら、うつ病というのは基本的にはエネルギーがなくなった状態です。
気分が落ち込み、やる気がなくなり、食欲もなくなり、何に対しても関心が持てなくなり、楽しかったことも楽しく感じられず、悲観的にばかり考えてしまう。
すべてエネルギー量が低下しているために見られる症状です。

それに対して、他者に対して攻撃性を持ったイライラのある人は、エネルギーがあります。
ですから、このような人にもし、うつ病の人と同様に休息を促せば、ありあまったエネルギーはマイナスの思いを伴った毒となって体中を巡り、さらに調子を悪化させます。
休息しているのだけれど、周囲の人に当たり散らしてばかりで気持ちが落ち着かない。
こうしたことはよくあります。

ですから、こうした人が「うつだ」と言う場合、こんなふうに話します。
「確かにうつかもしれませんが、いわゆるうつ病ではないと思います。
イライラするということはそれだけエネルギーがあるということです。
休息するよりも、何か動くようにしてエネルギーを使うようにしていった方がいいと思います。
水だってじっと瓶(かめ)にためたままでいると、腐ってしまいます。
水は流してこそ透き通ったきれいな状態を維持できるように、エネルギーも使っていった方がいいと思います」

うつだと言っても、いろいろなうつがあります。
エネルギーがなくなった状態にあり、休息と薬物治療を必要とするうつ病。
ありあまったエネルギーをマイナスに向けてしまい、自らを毒に冒(おか)していくうつ。
この見極めが大切です。

後者の場合には、うつといってもエネルギーがあることを自覚してもらうことです。
その上で、運動をしたり、仕事をしたりしてエネルギーを使ってもらうことです。
エネルギーを発散させることです。
その上で、もし前向きなことに気持ちを切り替えられるなら、何か目的を持って行動していくことが望ましいと思います。

今まで気力がなかった人がイライラを感じるようになったなら、それはある意味、よい兆候です。
エネルギーが回復してきているのですから、あとはそのエネルギーを前向きなことに使っていくとさらに元気になります。

イライラということについては、エネルギーといった面から見るとまた違った見方ができるのではないかなと思います。

 


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