【うつ病】うつ病の人への声のかけ方-「うつ病への対応⑫」-
2013年11月11日うつ病の人への声のかけ方-「うつ病への対応⑫」-
「うつ病の人にどのように声をかけたらいいのかわからない」
家族や職場の上司の方からよくそんな疑問を投げかけられます。
これまでに書いた「うつ病への対応」のコラムを読んでいただくと、うつ病がどんな病気であり、どんな状態にあるのかが大体わかると思います。
そうすればどのように声をかければいいのかということは、何となくわかってくるのではないかと思います。
それでもなお現実には、どのように声をかければいいのかわからないという方がおられると思います。
そこで、ここでは最低限、心すべきポイントをいくつかあげたいと思います。
1. 余計な声かけはしない
「どのように声かけをしたらよいのか」ということに対して、余計な声かけをしない。
まずはこれが原則です。
以前にも述べたように、うつ病の人への関わりは40℃の高熱がある人への関わりをイメージしてもらえると、ほぼ的確なものになります。
もしその人が40℃の高熱があるとしたら…、そっとしておいてあげるのが一番です。
余計な声かけをしないで、そっと休ませてあげることです。
40℃の高熱があるのです(そのように考えるべきなのです)から、仕事に関する連絡などを避けるべきなのは言うまでもありません。
2. 説教しない、励まさない
これはうつ病のことを知っている人なら、誰もが認める大原則です。
しかし、うつ病のことを理解していない人は、しばしば説教をしたり、励ましたりします。
「甘えているだけじゃないか?」
「現実から逃げているんじゃないか?」
「気持ちの持ちようじゃないか?」
「根性が足りないんだ」
「情けないヤツだ」
こんなふうに考えてしまうので、説教や励ましを繰り返します。
うつ病の人の多くは頑張れるのだったら頑張りたいのです。
やれるのだったらやりたいのです。
けれども、頭が回らない、気持ちがついていかない、体が動かない。
自分でも「一体、どうしたのだろう?」と葛藤しているのです。
全く行動できない状態にある人に説教や励ましをするのは論外です。
身体障害で足が全く動かない人に
「どうして歩こうとしないんだ」
「お前は甘えているだけなんだ」
という人がいたなら、
「おかしな人だな。
この人は障害というものを理解できないのだろうか?」
と思うでしょう。
うつ病の人に対しても同じことなのです。
うつ病は、ある意味、一時的な心の障害なのです。
動きたくてもすぐには動けないのです。
やりたくてもやれないのです。
最近は例外もありますが、うつ病になる人の多くは真面目で、自分を責めるような性格の人が多いですから、うつ病になったことで、すでに自分を責めています。
そこに、説教や励ましでプレッシャーをかけたなら、
「本当にいっぱいいっぱいだけど、まだ頑張れと言うんだな。
しかし、本当にもう動くことができない。
情けないなあ。
これ以上やれと言うなら、自分には無理だし、そんな自分がいたら周りにも迷惑をかけるだけだ。
もう死ぬしかない」
そうした気持ちに追い込んでいきます。
うつ病を悪化させ、最悪、その人を自殺に追い込むつもりでないというのであれば、説教や励ましは決して行ってはいけないことです。
3. 「粘ってくださいね」
実際にうつ病の人に声をかけるときには、
「無理しなくていいからね」
「今は何も気にせず、ゆっくりと休んでください」
こうした声かけが一般的で、的確なものです。
しかし、本当にうつ病で苦しんでいる人の心に寄り添うなら、
「何とか粘って一日一日過ごして下さいね。
今はそれだけで十分ですから」
こうした声かけこそが、苦しみの中でいっぱいいっぱいの状態にある心に響く言葉です。
本当にうつ病で苦しんでいる人にとっては、今日一日過ごすことだって大変なことです。
自分自身を責め、将来の不安に脅え、心は今にも押しつぶされそうになっています。
そうしたときには、ただ「無理をしないで」という声かけを超えて、「何とか粘って過ごして下さいね」という言葉の方がより的確で相手の心に伝わると思います。