コラム

摂食障害における体重測定の技法②

2014年03月02日

摂食障害の人の体重測定を行うにあたって重要なことは、体重測定を実施する頻度とその評価方法です。
ポイントは「いかにして病気の自己に基づく行動をとらせないようにするか」ということですね。
ですから、この問題もそうした視点から考えたいと思います。

一般に、重症な人ほど体重測定の頻度が高いように思います。
毎日、あるいは1日に何度も体重測定するといった人も多くいます。
まあ当然といえば当然です。
重症な人は病気の自己に支配され、病気の自己には強い肥満恐怖がありますから、その恐怖感に耐えられず、頻回に体重測定をしてしまいます。
体重測定をすると、減っていればそれがどれほど危険なことであろうとホッとし、わずかでも増えていれば強い恐怖感に襲われます。
体重測定のたびに感情は大きく揺れ、病気の自己が刺激されることになります。
よって、病気の自己に支配されないためには体重測定を実施する頻度を減らした方がいいと考えられます。

もう一点、頻回に体重測定をしない方がいい理由があります。
それは誤差の問題ですね。
体重測定の本来の目的は、自分の筋肉、体脂肪などを含めてどれだけの体重かを知ることにあります。
おなかの中にある食物残渣(ざんさ)や便の重さをもってやせたとか、太ったとかは言わないですよね?
体重測定において、これらは筋肉や体脂肪ではありませんので、そのときそのときで見られる誤差です。

でも、摂食障害の人にそんな理屈は通用しません。
食物残渣の重さも尿や便の重さも体のむくみ(むくみというのは体に水がたまった状態に過ぎません)も、全部『太った』という概念でとらえてしまいます。
単なる誤差の問題と考えられる体重の増加に対しても恐怖感が増大し、摂食障害の人にとっては大事件になってしまいます。

毎日、体重測定をしていれば便通のいいときもあれば便秘のときもあります。
体重測定前に何も飲まないときと、ジュース1本を飲んだ後とでは違います。
ましてや一日に何度も測定するとなれば、食前と食後でも大きな違いがあります。
当たり前ですよね。
しかし、これらのことを冷静に判断できないため、頻回の体重測定は絶対にやめるべきなのです。


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